PHOTOGRAPH:Tempei Takeuchi

「みんなが意識すること」で問題解決に繋がる

アウトドアアクティビティに情熱を注ぎながら、「冬を守るため」気候変動に立ち向かう「POW JAPAN」。
この先も私たちが雪山で滑り続けるためにできることを、代表理事の小松吾郎と、事務局長の高田翔太郎に聞いた。

Interviewer : Takamitsu Sakai
Editer : Minako Kaneko

2007年、地球温暖化が雪山に大きな影響を与えることに危機感を感じたプロスノーボーダー・JEREMYJONESが仲間たちとともにProtect Our Winters (POW) を設立。その後、POWの活動は世界13ヶ国に広まり、2019年2月、世界各国で活動が広がるPOW INTERNATIONALと同じミッションを掲げ、スノーボーダーの小松吾郎を中心にProtect Our Winters Japanの活動がスタート。

SNOW HEAVENに関する売り上げの一部を、POW JAPANへ寄付します。

POW JAPAN発足について経緯を教えてください。

小松:
発足には結構長いストーリーがあって。というのも、声をかけられてから実際に動き出すまでに2年弱ぐらい時間があったんです。最初に話を持ってきたのは長野県の白馬村に住んでたイギリス人の友人でした。環境のことをやりたいということで調べていたらPOWに当たって、本国のPOWと話したら「日本でも支部を立ち上げられたらいいね」という話があったそうで、日本人のパートナーとして僕に話が来たって感じです。知り合いだったJEREMYも、「吾郎だったらいんじゃないか」と言ってくれて。その時、もうすでに自分のプロジェクトで環境についても触れていたのですが、世界中の同じ想いの人たちと一緒にやるのもいいんじゃないかなと思ったんです。それから2年後、立ち上げようとしていた仲間たちが自分の国に帰ってしまって、自分1人になったとき「もうできないかも」と思ったんですが、周りに後押しされて、その流れで翔太郎を紹介してもらって、そこからいろいろ始まりました。

最初の活動で大変だったのはどのようなことですか?

小松:
スタートラインまでが大変でした。スタートしちゃうとPOW自体は名が知られていて、扱うテーマもすごく賛同は得やすかった。ただ環境団体をやるのが初めてだったので、なんとなくは見えるんだけど、やり方に悩みながらもまずは進んでいった感じ。でも出会いに恵まれ、感触を得るうちにだんだん見えてきた気がします。

高田:
吾郎さんとほぼ同じ。最初はそれほど確信がなかったんですけど、立ち上げ時に描いたPOWが目指すビジョンと今の活動は大きなずれもないので、まっすぐ進めているのかなと思ってます。ただ非営利団体としてやっていくのが初めての経験だったことや、人手不足でのスタートだったりと組織運営の難しさがありましたね。その後は少しずつスタッフが増えたり、外部の力を借りることで、いろんなことが実現可能になってきました。

POW JAPANはどういった団体で、どのような活動をしていますか?

小松:
「冬を守ろう」というメッセージのもと、アウトドアフィールドで活動するのが好きな人の集まりです。冬を守ろうっていうと、雪や冬に特化していると思うんですけど結局、自然や季節を守ることに繋がるので、一年中やることがあります。POWの理念(ミッション)は全世界で共通していて「アウトドアアクティビティに情熱を注ぎ、そのフィールドやライフスタイルを気候変動から守るために行動する仲間たちの力となる。」というものです。アメリカでは仲間たちのバックアップをするっていう側面が大きくなっているので、僕たちも自分たちが活動を進めていくっていうのはもちろん、活動を始める仲間たちを育てていきたいと思っています。

活動における
3つの柱

  • 仲間づくり
  • 啓蒙・教育
  • ゼロカーボン実現に向けた実践

「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロに、気温上昇を1.5℃に抑える」ことを目指すために活動していますが、その内容は大きく3つに分けられます。一つが「仲間づくり」。POWを知ってもらうために、スノーボーダー、スキーヤー、アウトドアプレイヤーと繋がり、イベントやWEBサイトでの情報発信などをやっています。2つ目が、「啓蒙・教育」。学校に出向き、アスリートによる実体験を交えて、気候変動問題について子供達に教えています。これまでは長野県内での実施が多かったですが、今後は他の県でも増やしていきます。最後は「気候危機対策を加速させること」。そのために行政と関わったり、スキー場とも連携して活動しています。長野県が主催する環境フェアで基調講演をさせてもらったり、来月は札幌市と共催でシンポジウムをする予定です。

取り組みのひとつ、白馬のリゾートを再生エネルギーで運営してくというのは、衝撃でしたね。どういった形で進めていかれたんですか?

高田:
気候変動問題を理解していくと、対策となるいろんな項目の中で一番聞くのはエネルギーなんです。日本のCO2排出の大部分はエネルギー起源といわれるくらいなので、本質的に解決するには、再エネは大事だと思っています。特にスキー場は使用する電力がすごく多いというのもあるし、気候変動の問題に関心を持っている人で、ガソリンを使ってスキー場に行って滑ることに矛盾を感じる人もいます。そんな中でスキー場が率先して問題を解決していく方に進んでいければ、みんなが気持ちいいなってところで。僕らは、個人のサポーターや企業にも再エネ利用を推奨していますが、スキー場みたいなところが変化するとインパクトが大きいだろうって思っています。きっと5、10年後にはスキー場が再エネを利用するってことはスタンダードになってるはず。それをいち早くやることで、マーケティング効果も生まれてくると思います。海外では、よく旅行会社の企画などで「環境に優しいスキー場のトップ10」とか出てたりするんですよね。そういう流れを日本でも作っていきたくて。スキー場に変化を促すだけじゃなくて、「そういうスキー場に行こう、応援しよう」っていう滑り手の空気感も同時に作っていきたいと思っています。

今の環境に対して感じていることはありますか?

高田:
例えば再エネでも抱える問題っていろいろ聞くじゃないですか。森林を切り開いて大型のソーラーパネルを作って、というのは僕は本末転倒だと思っていて。自然環境が悪化しているのは海でも川でも雪山でも感じるところなんですよね。例えば川でいえば、砂防ダムが山の奥まで延々と数百メートルごとにあったり、サーフィンをしてるとわかりますが、日本の海岸はどこにでもコンクリートがあるみたいな。これまでは利便性とかお金の都合を重視して進められてきたけど、今一度開発について、環境のこともバランスよく見ながら進めていくべきなんじゃないかなと非常に強く思うところですね。

小松:
それが当たり前であってほしいんだけどね。気候変動の問題にPOWは取り組んでるんだけど、取り組みの中でそういったことにも関心が向くようになったらいいなとは思ってますね。「環境のこと大事にしようぜ」ってのがあんまりはばかられないっていうか。

「自分ごと」にすることが大事なんですね。

小松:
異常気象や大きい災害や気候災害がいっぱい起こったりなど、環境がどんどん変わっているのは、ほとんどの人が感じていると思っています。でも「じゃあどうしよう」っていうところが弱くて。例えば、再エネについて考えた時、「逆に山切り開いて環境壊してるじゃん」で止まっちゃう人も多い。でも、「屋根の上に乗せるのは環境壊してないよね」とかで止まるんじゃなくて、それ以外の方法を探ることが大事な気がします。逆に「じゃあCO2を出しまくる火力発電や、リスクの大きい原発のままでいいの?」ってなると、心から「うん。」とは言えないと思う。もう一回考えてみたりもう一歩先の情報を得たり、そういうことをみんなが意識することが重要かなって思っています。

高田:
嫌だなと思うことや納得がいかないと感じることを、そのままにしていることって結構多いと思うんですよ。だけどそれを声に出してみるとか、SNSでポストしてみたり、そういう活動をしている団体をフォローしてみるとか、一歩外に踏み出すアクションができるといい方にうまく回っていくんじゃないかなって気はしてますね。たぶんそういうのって、POWとかがやっているとやりやすいと思うんですよ。勇気がいることもPOWやアンバサダーが口に出すことで、少しずつ空気感が変わってきたらいいのかなと思ってます。スノーボーダー、スキーヤーは変化を目の当たりにしている人たちだからこそ、きっと伝わると思うし、みんなが受け取っている自然からのメッセージを大事にした方がいい。それが自分のやりたいことを続ける環境を守っていくことに繋がるので、ぜひやってほしいなって思います。

最後に、私たちができることを教えてください。

小松:
できることはすごくいっぱいあるんだよね。まずは、調べること。いろんな情報の中から、自分の答えを出すことが重要です。それと、感覚的に受けている環境の変化に対して考える事から始めるのがいいのかなって思いますね。簡単で効果的な一歩で言えば、家の電気を再エネに変えてみるとか、検討してみてほしいです。あと、ぜひPOWと繋がってください。自分のエリアでのイメージが芽生えてくると思います。僕らは全国のスノーファンと進めたいと思っているので、各地域で事を起こしてくれたらそこに関わったり、アドバイスや人を繋いだりできるかもしれない。そういう形でローカルの動きを応援していくのが理想です。地域によってやることって全然変わってくるので、新潟発の面白いプロジェクトも生まれればいいなと思ってます。

高田:
気候変動対策っていう点で言えば、POWのWEBサイトで情報は見つけられるはず。一方で、自然の中で学んだことを大事にすることにも価値があると思うんですよ。特に今は、前の世代に比べて環境が崩れてきている。それをしっかり伝えていくことが大事なのかな。それぞれの時代で求められるものや目指してきたことに違いがあるのは当然のこと。その反動がいま出てきちゃってると思うんですよ。だから気づいたら、いい方向に戻すように動いてほしい。特にそこらへんは若い人の力が必要ですし、仲間が多ければ多いほどPOWが描くビジョンの実現性が高くなると思っています。自分1人で動くことが難しければ、こういうムーブメントに乗っかってみるのも面白いんじゃないかと思います。

POW JAPAN 代表理事

小松吾郎

北海道倶知安町出身。長野県大町市在住。4歳でスキーを始め、12歳でカナダBCへの移住後スノーボードに移行。カナダ在住時、新しいスキー場建設への反対運動をするネイティブとの出会いから、「スノーボーディングと自然の関係性を再考し、人類による自然利用の仕方を変えるべきだ」という思いに至る。POW発足以前から自然環境への負荷を軽減することなどを提唱し続け、2018年、代表理事としてPOW JAPANを発足する。

POW JAPAN 事務局長

高田翔太朗

北海道札幌市生まれ、長野県大町市在住。大学生のときにパタゴニアで働き始めたことから、公私共にアウトドアどっぷりの20代を過ごす。30代半ば、地に足がついたサスティナブルな生活のヒントを求め、ニュージーランドやタスマニアの自然の中で遊び、働いた15か月を終えて日本に帰国。その春、声がかかり事務局長としてPOW JAPANの立ち上げに関わる。