SNOW HEAVEN 編集部内でも人気の高く、気持ちの良い圧雪バーンを滑れる「妙高 杉ノ原スキー場」。まるで誰もが上手くなったかのように勘違いしてしまうほどで、朝イチは至福の1本を味わえる。今回はそんな杉ノ原の圧雪職人である、山藤さんに密着させていただきました。AM2:30から、AM8:30のオープンまでの間に行われる圧雪作業をぜひご覧ください!
妙高 杉ノ原スキー場 営業スーパーバイザー(ゲレンデ整備担当):山藤 吾郎
京都府出身。10歳で長野県の黒姫高原へ移住し初めてスキーを体験。学校が休みの日は毎日スキー場へ行くほどハマっていく。その後、スキー好きが講じて妙高 杉ノ原スキー場へ入社。パトロールに所属した後、31歳で腰を痛め圧雪部隊へ。夏は軽井沢でゴルフ場の整備も行う。圧雪歴18年の大ベテラン。
大きい圧雪車の雪を落とすのは大変そうですね!
降雪の多い日は大変ですね。一見、ただ雪を落としているだけのように見えますが、実はこの作業がとても重要なんです。しっかり雪を落とさないと、綺麗に圧雪した上に雪の塊が落ちてしまい、気持ちよく滑れるゲレンデにならないんです。だから、まず最初に丁寧に圧雪車の雪を落とすことにこだわっています。
朝礼ではどんなことを話されるんですか?
ゲレンデのコンディションを見ながら、雪入れやパウダー残しなどの指示を行います。人手不足で、全員が圧雪専門のスタッフではないので、機械操作の確認も行います。雪質によって操作も変わってくるんですよ。
圧雪車はどのメーカーを使っているんですか?
妙高 杉ノ原スキー場では、新潟県長岡市に本社がある大原鉄工所の圧雪車と、ドイツのピステンブーリーの2種類を使っています。今回は日本でもまだ数台しかない最新のピステンブーリー600を使います。
すごいボタンの数やタッチパネルで近未来的で快適ですね!窓が開いていますが、いつもなんですか?
高級車みたいですよね。運転中は必ず窓を開けています。なぜかというと、匂いでオイル漏れなどの機械の不調をいち早く気づくようにするためです。吹雪いているときは雪が入ってきて大変ですね(笑)。
大原とピステンの2種類ありますが、どんな違いがあるんですか??
分かりやすいところでいうと、大原とピステンで仕上げに使われるミルの溝の深さが違うんですよ。大原の方が深い溝です。あとは機械に100%はなくて、メーカーによって得意不得意があるので、この2種類で苦手なところをカバーし合うという感じです。例えばですけど、うちのスキー場は標高が高いので、下のコースは雪が硬くて、山頂は雪質がいい時があったりします。そんな時は硬い雪が得意なピステンが下に、登坂能力も高い大原が上へ向かうという風に使い分けたりもしています。
すっごい狭い道ですね!!これからどこのコースに向かうんですか?
三田原第3高速リフトエリア(別名3高)に向かいます。この道は、通常圧雪車が通れる道幅ではないんですよ。なので日々圧雪しながら、雪を盛って固めて、道幅を広げています。
3高エリアもそんなに広々したコースじゃないですよね?
スキー場によっては雪のない状態の地形が平らで綺麗なところもあるんですが、これから行く3高エリアは地形がボコボコしてるので、降ってるように見えても雪がうまくついてなかったりするんです。なので前についているブレードで雪を盛ったり削ったりして、なるべく平らになるように仕上げています。
常に状態を見ながら考えて、滑り手目線で圧雪していただいてるんですね。
パトロールをやっていたので、滑り手目線で圧雪できるかもしれないですね。平らなところって、スノーボードだと止まっちゃうじゃないですか。パトロールや秋の草刈りを通して、各コースの地形や雪を削れる場所や盛る場所も把握しているので、ここは削って少しでも傾斜をつけたほうがいいなって思いながら整備しています。
今年は少雪ですが、圧雪作業大変じゃなかったですか?
本来積雪が10cmあればスキー・スノーボードって滑れると思うんですけど、圧雪車のキャタピラの爪が10cmあるんです。なので雪が少ないと地面が掘れて走れないので、今年はなかなか圧雪がかけられず厳しいお声もいただきました。圧雪をかけれるようになっても雪の状態を見ながらじゃないと地面が出てきてしまうので、雪が少ないと大変ですね。
こんなに何往復もするなんて初めて知りました。簡単そうに操作してますけど、動きに合わせて細かい操作をされてるんですね。
毎日雪質も天候も違うので、それに合わせて後ろのミルの角度を変えたり、あとは圧の掛け方ですね。上りで圧をかけると進まないので、下りで圧をかけて仕上げて行きます。ミル自体も2分割になったり、使い分けができるんですけど、ゲレンデを綺麗にするために、昇りで2分割、下りは分割せずに仕上げるという工夫をしたりしています。
傾斜のあるところってジェットコースターに乗ってるみたいですね!圧雪しづらいコースってどんなところですか?
斜度があって狭い道ですね。登れないこともありますよ(笑)。なので、ちょっとづつ登って下ってを繰返していきます。通路が狭いと真ん中が掘れちゃうので雪を盛って平らにしていきます。積もったときには通れば平らになるんですが、雪が硬い日は通っただけでは平らにならないので、何度も往復して圧雪しています。
圧雪中はどんなことを考えたり意識しているんですか?
とくに意識しているのは、水が上から流れてくるようなラインですね。縦のコースに対して横に行かない、くねくねしない。見た目にもこだわっているんですが、それはお客さんに気持ちよく滑ってほしいっていうのが1番ですね。何回か滑ると圧雪のラインって無くなっちゃうけど、朝イチにリフトやゴンドラから見えるゲレンデが綺麗だと、テンション上がるじゃないですか。そこはやっぱり大事にしています。
あとは時間ですね。8時半のオープンには必ず間に合わせないといけないので、作業が遅れているところや人手が足りないところに、手伝いに行きます。これからパノラマゲレンデ方面に移動しますね。
あとは時間ですね。8時半のオープンには必ず間に合わせないといけないので、作業が遅れているところや人手が足りないところに、手伝いに行きます。これからパノラマゲレンデ方面に移動しますね。
また違うコースですが、意識することも変わってくるんですか?
連絡通路は平坦で止まりやすいので、初心者の方でも滑りやすいように圧雪のラインをつけています。ダイナミックコースはパノラマゲレンデとの合流地点にもこだわっています。ここでも滑る時に違和感のないよう、水が流れるような自然なラインを意識しています。
本当に職人技ですね。最後に、圧雪の面白さとは?
そうですね、車も運転も好きなので、車好きの方がドライブしてて楽しいっていう感覚に近いかもしれないです。だからやっぱり楽しいですよ。楽しくないとできないですよね。だから、楽しさを見つけ出してやってます(笑)。例えば、一斉に圧雪車がスタートして、誰が一番綺麗にできるかとか。そこから他のスキー場との勝負に繋がっていると思って日々圧雪してます。やっぱり勝ったら嬉しいじゃないですか。あとは何よりお客さんに喜んでいただいた時が一番嬉しいです。
まさに職人技で圧雪を行う山藤さん。そのプロフェッショナルな仕事には、スキーと滑り手である私たちへの愛情をとても感じました。熱い思いで作られているからこそ、”勘違いバーン”と呼ばれるほどの素晴らしいグルーミングバーンが出来上がる。時間をかけて仕上げられている圧雪はとても贅沢だと感じました。少雪で圧雪も大変な中、私たちのために作業をしてくれている圧雪隊には本当に感謝ですね!ぜひ一度、妙高 杉ノ原スキー場の素晴らしいバーンと山藤さんの思いを体感してみてください!
※一緒に働きたい方も大募集とのことです!