新潟県妙高市を拠点の一つに活動するフォトグラファー集団 STAY.RAW。カメラマンとライダーが作り出す独創的な作品は、今年もフリーペーパー SNOW HEAVENの巻頭グラビアを飾りました。今回はSTAY.RAWクルーの中からカメラマンの白川勉さん、桝竹祐也さん、マネージャーの主田綾佳さん、チームエディターの宮下徹さんにインタビュー。昨年度の活動や誌面に掲載された作品の制作秘話を伺いました。
宮下 当日、2セクション撮影することにしたのですが、現場での調整は主田が進めてくれたんだよね。
主田 流れとしては、まずはライダーがみんなでやりたいことを出し合いました。テーマはジブとジャンプになったのですが、2パターン撮るにあたってどこで撮影するかみんなで話し合ったり。ライダー達は、見方がそれぞれ違うのでアイテム作りが大変でしたね。作り出すまでだけではなく「やっぱり違う!」と崩して作り直したので、準備の方が長くなり撮り始めるまでに時間がかかりました。だから造形は2箇所で数時間ずつかかって、21時に準備を始めて撮影が終わったのは朝6時でした。途中で雨が降ってきて最後の方は土砂降りだったのを覚えています。
宮下 ピステンチームは造成を快く引き受けてくれた?
主田 引き受けてくれました。メンバーの1人が積極的に指示してくれて、すぐにライダーのイメージを形にしてくれました。また、普段水上(群馬県)でディガーをしているライダーも何人か参加してくれたのでスピーディーにできましたね。
宮下 雪の量が多すぎるとライダーと温泉を同時に写せないし、少なすぎると温泉は写るんですが、アプローチとランディングを作れない。それで4シーズン程、何回かチャレンジしたんです。この露天風呂は真冬には温泉を止めてるので季節は春でした。
白川 ちなみに撮影した時間帯は朝の5時頃。ライダーの梅原颯太は何本も飛んでましたが、全てメイクしていました。
白川 この写真は、ライダーの光くんがサポートされている板のメーカーのカタログで表紙を狙いたいということで、急遽撮影をしに行ったんです。その中の1枚。実際表紙に使われたものとは違う写真ですけど、これはこれで良かった。場所は水上の天神平スキー場で、スキー場の中にローカルの中ではここを飛ばないと始まらないというような岩があるんです。この時、カメラをセットして撮った正面からの写真もあるんですよ。三脚で固定して他のスタッフにシャッターを押してもらったり。いつもだいたいそうやって撮影をしています。よかったことは青空になったことかな。カタログの表紙を狙ってたので、曇り空では面白くなかったんです。
宮下 撮る際の声かけも聞こえる場所なので、そういう面ではやりやすかったでしょう?これ、岩を飛び越えてるんだよね?
白川 そうです。そして、かなり落ちてます。
桝竹 僕はこの写真。背景には写ってないんですけどB.O.Bの開催地、長野県の野尻湖の湖畔で撮りました。その時、ライダーの堀池颯太はヘルプ要員として来てくれたんですが、せっかく来てくれたんだから何か撮ろうかと言って実現したのがこの写真ですね。
宮下 これはライダー側からここで撮ろうって言ったそうだけど、こういう時って桝竹から指示を出すの?
桝竹 僕はライダーが好きに思う通りやってもらう感じだけど、ある程度のイメージは伝えますね。この時はこの時は出来るだけ刺してオーリーをしてと伝えました。
主田 桝竹は悩んでる子にはアドバイスするし、やりたい事が決まってるライダーには何も言わないからライダーをちゃんと見てると思う。自分がどうやったら格好良く写るかわからないライダーには「こういう方がいいぞ」みたいなのを言ってあげるし、やりたい事が決まってるライダーにはあえて何も言わないで好きにさせる。そうちゃん(堀池颯太)は分かってるから「体勢低くして」くらいしか言ってなかった気がします。
桝竹 そうらしいです(笑)。これあんまり高く飛んでるものじゃないんですよ。奥から飛んできてるんですけど、超えてるだけですね。この柵は僕の腰ぐらいしかないので、フィッシュを使ってライダーに近いところで上から撮っています。あとは形であったりとか、柵により近い方が格好いいので、撮り飛びすぎないようにとかその微調整だけぐらいでしたね。
宮下 フィッシュは桝竹のスタイルだよね。
本当は空いてるスペースあるじゃないですか。そこの狭いところを通り抜けてきて欲しかった。だけどそこまでのアプローチがとれなかったので、建物の外側に着地しています。スピードが出なかったのでスタイル重視でキメてもらいました。
宮下 白黒にした理由もあるんだよね。
白川 中にブルーシートがいっぱいあったのが嫌だったんです。カラーだったら金属のところもサビ付いてて良かったんですけどね。
主田 私はライダーが川下純平の写真です。葉っぱを板に載せて、ドロップした時にパラパラとなるような演出をしました。よく見ると落ち葉が舞ってるんです。忍者っぽくなっていて、ちょっとしたお洒落ポイント。
白川 長野県の黒姫にある廃屋で撮ったんですけど、この時は雪は降っていなかったので滑ってアプローチ出来なかった。なのでドロップして落ちてくるところを下から撮ったんです。
欲を言えばガラスにそのライダーが映って欲しかったのですが、そこまでは上手くいかなかったです。
白川 これはあと15分前にやりたかった。2月の日の出の時間だったんですが、もう少し前ならもっと妙高山が朝焼けで赤かったんですよ。写真ではちょっと赤くなってますけど、本当の日の出って、妙高山頂上の辺りが赤くなるんです。なのでリベンジしたいですね。
桝竹 白川といえばナイトパウダーの写真が印象的だよね。
白川 体にフラッシュを巻き付けてるんですよ。結構真っ暗で、一番大変なのがピントを合わせることなんですよね。だからおきピンを使って、その場所にライダーに行ってもらわないといけない。意思疎通の難しさはあります。
宮下 僕もたまに撮ってもらうんですが、滑る方からすると真っ暗な中滑るのってすごく怖いんですよね。しかもスプレーを上げたいからスピードをつけないといけない。でも撮影場所はうっすら光ってるくらいだから見えづらい。ライダーのホーリーはどうやって撮ってるの?
白川 ホーリーは小さい投光器で斜面を照らしてるぐらい。邪魔にならない程度で照らしていて、その光に向かって来てもらう感じ。ライダーは、色付きのゴーグルレンズをしたら真っ暗で見えなくなるんでレンズを外してます。こういう写真はスキー場でも撮れるんですよ。
白川 今後同じ事を続けていくだけでなく、新たなことをやっていくってのも大事だね。
桝竹 僕らの活動が、もっと広まって行けば良いね。
白川 今シーズンのB.O.Bで新たなライダー達が参加してくれたこともあって、知名度が上がってきたと思えるのかなと。少しストリート色が強くなりすぎている感がありますが、それを大事にしつつ山での撮影もしたり、もちろんスキー場でも撮る。何でも撮れるところを見せたい。どこで撮ってもやっぱSTAY.RAWの写真すごいなっていうのを見てもらいたいですね。あと、やってみたいことがあって、街中を滑って撮影してみたい。例えば、市町村に協力していただいて町おこしの一貫としてイベントを開催してみたり。アライスノーリゾートのようにスキー場でも盛り上げて行けたら。ゲレンデだけじゃなく、スキー場レストランの中とか。協力してくれるいただけるスキー場があればぜひ挑戦してみたいです。
宮下 僕も今回白川の写真がメジャーでかつコアなボーダーに支持される雑誌の表紙に使って頂いたことで、どこのお店に行っても「今、こういう若手をフックアップするような動きしてるのってSTOMPや、STAY.RAWくらいじゃないですか」と言われる。狙っているところではあったのですごく嬉しいです。今はパウダーでスプレーを上げてる写真や、自然をバックに大きいターンしてるとかの写真は世の中に溢れすぎていて新鮮味が出にくいかもしれない。ストリートの写真ってライダーの個性が出やすいし、探せば探しただけ新しいものが見つかるというか。もちろん、白川がいうようなロケーションでも、面白いものが撮れるんじゃないかなというのは常に思っています。
PROFILE
宮下徹:1972年生まれ。新潟県妙高市出身、在住。29年前、関温泉スキー場リフト下にスキーではない一本のラインを見て、跡の正体に疑問を持ったことからスノーボードを始める。STAY.RAWではチームエディター、グッズ制作、賑やかしを担当。
桝竹祐也:1979年生まれ。奈良県出身、大阪市在住。スノーボード歴26年、カメラ歴13年。ライダーの写真を撮るためカメラを始める。2021年5位、2022年3位 cowday 写真部門入門 受賞。海外でのフリーライドパークイベント「holy bowly」に主催者側から招待された数少ないカメラマン。
白川勉:1978年生まれ。新潟県上越市出身、在住。スノーボード歴27年、カメラ歴12年。2015、2016年東京カメラ部 日本の47枚(新潟)、2019、2021年にRes Bull Illume Semi-Finalistに入選。NIKKOR photo contest 64th 3部門、cowday 2022 風景写真部門に選ばれる。
主田綾佳:埼玉県出身。ホームゲレンデは妙高 杉ノ原スキー場。STAY.RAWの活動や謎に興味を持ちSTAY.RAWの活動に参加、その後マネージャとして活躍中。
INFORMATION
STAY.RAW
SHOP : https://stayrawcrew.theshop.jp
Instagram : https://www.instagram.com/stay.raw_crew/?hl=ja