SNOW HEAVEN

【雪でアソビナ】真夏の海老名に舞い降りる、知られざる新潟雪物語

ららぽーと海老名で開催される真夏の雪遊びイベント「雪でアソビナ」

神奈川県海老名市で、毎年真夏に開催される「雪でアソビナ」。このイベントでは”雪国新潟”の雪が、雪に馴染みのない子供たちを魅了し楽しませている。ソリゲレンデや雪玉遊びなど、思い思いに雪と戯れる海老名の子供達。このイベントの仕掛け人、株式会社MoVeのプロデューサー小山篤史さんに、イベント開催についてのきっかけや思いについてお話を伺いました。

株式会社MoVe プロデューサー:小山 篤史
神奈川県横浜市出身。現在は海老名市在住。専門学校卒業後、スノーリゾートでのアルバイトを経て広告代理店に就職。その後、移動販売を経て、現在の株式会社MoVeに入社。 THE SLOPE(SlopeStyle)のイベント企画・運営や、ブランドのプロモーションの立案及び施行、イベントのプロデュース全般を行うなど、その活動は多岐にわたる。更に2014年からは海老名市で「雪でアソビナ」企画運営も行う。

スノーボードを始めた高校生時代。この頃からスノーボードへハマっていく。
小山さんとスノーカルチャーの出会いについて教えてください。
もともと生まれ育ちが横浜で、雪とは全然関係なかったんですけど、父親と叔父さんがスキーをやっていて、中1の時にかぐらスキー場に連れて行ってもらったのがきっかけです。その時は猛吹雪でいきなり上の方に連れていかれるわ、リフト乗ったら止まるわ、鼻水凍るわで、もう二度と行かない!みたいなよくあるパターンで始まりました(笑)。
なかなかハードな始まりですね(笑)。そこからスノーボードにハマったきっかけを教えてください。
そこから何回か叔父さんにスキーに連れて行ってもらったんですが、中学校を卒業するくらいに、友達が「スノーボードって知ってる?今はあれがイケてて、めちゃめちゃモテてるよ」って言われて。それでみんなで木島平のスノーボードツアーに初めて行ったんですけど、全然滑れないわ、おしりびしょびしょになるわで(笑)。その時サイドヒットみたいなところで、バックフリップしてるお兄ちゃんがいて「うわ、超かっこいい!」って思ったことがハマったきっかけですね。
山に篭っていた当時の小山さん
カッコ良さへの憧れって大きいですよね。進学を考える頃だったと思うんですが、いかがでしたか?
ずっと続けていたサッカーをしたいから大学へ進学するという選択肢もあったんですけど、やっぱりスノーボードにめちゃめちゃハマってて。当時、高田馬場にあったスノーボード専攻のある専門学校に行きました。そこから冬は北志賀・竜王に籠って、夏はニュージーランドで過ごしていたんですが、一度社会に出て、スノーボート関係の仕事に就きたいと思ってメーカーさんとかに履歴書を送ったりしてたんだけど、どこにも引っ掛からなくて。そんな時にGREENROOMという横ノリ系に強い広告代理店が募集をしていて、受かったのがちょうど21歳の春ですね。
そこから現在に至る経緯は?
そこでいろんなメーカーやブランドを担当させてもらって、スノーボードにまつわるカタログ制作、広告のプランニング等を2年半くらいやって。社長が25歳の時に独立してたので、自分も25歳までに何かやりたいなって考えたときに、山に戻りたいという想いがあったので、24歳の時にGREENROOMを辞めて、ケータリングカーを買って1シーズン白馬でクラムチャウダー屋さんをやったんです。
会社を辞めて独立って結構勇気がいりますよね。ちなみに、なぜクラムチャウダーだったんですか?
24歳なので勢いだけでしたね、何とかなるだろうみたいな(笑)。クラムチャウダーがオシャレだよって教えてもらったので、食べたことなかったんですけど「じゃあ俺クラムチャウダーやります!」って(笑)。

その勢いが今にも繋がっているんですね!そんな小山さんが主催されてる「雪でアソビナ」ですが、このイベントを立ち上げた経緯を教えてください。
移動販売の後、現在の会社に入ってSlopeStyleという日本トップクラスのコアな大会(後のTHE SLOPE)を会社で企画・運営をしてたんです。でも自分も結婚して子供が生まれて、気持ち的にコアなところと反対の子供達に対して、自分がモテで始めた”憧れ”みたいなものが広められたらいいなと思い始めたんですね。僕らの小さい頃って、年に2回ぐらい関東でも雪が降ってたんです。なので、雪に対する憧れみたいなのがあったり、スキーやスノーボードをやりたくなるけど、ここ最近は冬に雪が降る事が少なくなってしまったので、そもそも雪自体を知らない、見たこともない子供が多くなって来たのかなって。

そういう心境の変化があったタイミングで、2014年に関東に大雪が降りました。その時に、うちの家の周りや近所を広範囲で雪かきをして、除雪した雪で自分の子供のためにソリゲレンデを作って遊ばせてたんです。でも2本くらい滑ったら寒いってすぐ帰っちゃって。そしたら代わりに10人位近所の子供達が集まってきて(笑)。僕もスノースケート出したりして遊んでたんですよね。そしたらその中の子の親が市議会議員で。
すごい偶然ですね!
僕は雪の仕事をしているので、雪でこうやって子供達が楽しんでくれる姿を見て、海老名にも雪持って行きたいんですよね。って話をしたら、「じゃあすぐにやろうよ」って言っていただいて。2人ですぐ海老名市役所に行って話をしたら面白そうだねっていう事で、7月に開催されている「えびな市民まつり」っていう、一番大きいイベントに雪を持って行くことが決まりました。

イベントで講演する伊藤博士(左)
イベント決定までも本当に早かったんですね。でも、雪を持ってくるって大変だったんじゃないですか?
知り合いの人に連絡して相談したら、野沢温泉から持ってこれるかもしれないよって教えてもらって、話をしたら、取っておいてもらえる事になったんですよ。でも、5月くらいに大雨が来て、もしかしたらイベントができるほどの雪は残らないかもって。みんなに言っちゃった後だし、焦りましたね(笑)。

色んなところに雪ないですか?って聞いて回ってんですがどこもないと。そしたら、雪だるま財団ってところが雪の研究をしているから連絡してみたら?って教えてもらって。すぐ連絡したら、今もずっとお世話になっている伊藤博士がいて、経緯を話したら「俺、雪貯めてるからあげるよ」って言ってくださって。最終的には伊藤先生が保存されていた新潟県長岡市山古志の雪と、野沢温泉で取っておいてもらった雪をいただくことができたのと、いろんなスキー場さんの協賛もあって、予定通り2014年7月に開催できました。
スピード感もすごいですけど、各所からの協力があっての開催って素敵ですね。
はい、またちょうどタイミングが良かったのが、その2014年に圏央道も開通になったんです。でも、あまり海老名の人って大きいニュースにしてなかったんですよね。僕の中ではスキー、スノーボードに行く時に圏央道が通じるって本当にすごいことだったんです。どれだけ新潟が近くなって、日帰りで行ける圏内が広がるかっていう話をしてたので、それで新潟と海老名は雪が持って来れちゃうぐらい近いところだよっていうPRも後で付けたんです。

会場設営の様子。大量の新潟の雪が海老名に運ばれる。
新潟からしてもそう言っていただけるのは嬉しいです!ちなみに持ってくる雪の量ってどれくらいあるんですか?
昨年はちょうどトラック4台分で50tくらいですね。道路沿いとかの雪だと、融雪剤とか色んな薬とかが入っちゃうので、ちゃんと綺麗な雪を取っておいて、その上にウッドチップを掛けたりして、きちんと計画して保管をすると、次の冬まで持つそうなんです。

山古志の雪がそんなに持つっていうのが不思議というか意外でした。
僕もその現場を見に行かせてもらったんですけど、30°Cとかになるような場所なんですよ。別に涼しいとかじゃないんですが、そこに冬の段階から伊藤先生が計画をされて、昔ながらの知恵で雪を取っておくんです。それが例えば有機物で野菜を保存することにも使われたりとか、サーバーのエネルギーを冷やしたり、子供達のクーラー代わりに使われたり。いろんな使われ方をしてる中で、エンターテインメントとして僕らはそれをいただいているっていう感じですね。

初めての雪遊びを楽しむ子供たちの素敵な笑顔  
私は雪国育ちなので雪が当たり前にあるんですけど、いざ海老名でイベントに開催して、雪ではじめて遊ぶ時の子供たちのリアクションはどんな感じだったんですか?
みんなもうずっといるんですよね。全然離れないというか、雪の前で数時間遊んでる。僕らが用意するのはスコップとバケツとそりゲレンデぐらいなんですけど、すごく並びます。雪の広場だけでも本当に目をキラキラさせて遊んでいますね。
山古志の雪が、海老名で大人気

前回まではスノーボードメーカーさんが協力してくれていて、親子で初めてのスノーボードっていう企画をやっていました。親御さんは自分達は楽しいのは分かってるんだけれども、子供をゲレンデに連れて行った時に喜んでくれるか分からなかったそうなんです。でも、今回このイベントで子供達が楽しんでるのを見て、ゲレンデに連れて行ってもいいんだって分かったそうです。それが凄く嬉しかったですね。

親子で楽しめるイベントだ

僕らが子供だった頃は雪が降るのは当たり前のことだったけど、そういう体験を今の子供達に用意出来たことがうれしく思います。

遊ぶだけでなく、天然雪エネルギーを体感できるクールスポットも
雪って住んでいると、楽しいこともありますけど大変なことも多いので、”貴重な物”とはあまり思わないかもしれないですね。
そうですね。雪の市民会議っていうのが2023年の7月に長岡であって、僕も登壇させてもらって雪でアソビナの話をさせてもらったんですけど、今までは技術系で雪を利用してる企業の参加が大半だったようで、こういうエンターテイメントとして風に雪をありがたく使ってくれる首都圏の人がいるっていうのがすごく面白いって言っていただいて。税金を掛けて捨てたり、あるところでは厄介者となっている雪が逆に資源になって、あるところではブランドになって、お金を出してでも欲しい、ってなっていけたらすごくいいですよね。
なんだか新潟の方にこそ知っていただきたいかもしれないですね。今後このイベントをどんな風にして行きたいですか?
今、海老名でやらせてもらっていて、皆喜んでくれてるので、それは続けていこうと思ってるんですけど、もっとその行政だったりとか、あと商業施設だったりとか、もう少し町ぐるみで盛り上げていけたらいいなと。

海老名だけじゃなくても、高速が通っていて雪が降るところであれば、例えば大阪でやる場合に、岐阜や滋賀から雪をもっていくこともできるとか。雪があるところから雪がないところに持って行く仕組みができれば、もっともっとスノーシーンへの参加率も上がってくるんじゃないかと。そんな風に広げていければと思っています。
昨年のイベントの様子

新潟と海老名をつなぐ、雪の物語。いかがでしたでしょうか?今年も開催予定との事なので、ぜひこの夏は海老名で新潟の雪を体感してみてはいかがでしょうか?これから雪山デビューを考えているファミリーにもピッタリのイベントですよ!

「雪でアソビナ」photo:小倉里奈

神田
神田
SNOW HEAVEN 編集部
趣味はサーフィン。2019年に湘南から新潟に帰郷しスノーボードを始める。ニックネームはきゃんだ。BEST BODY JAPAN 2018 新潟大会優勝。お酒が好きだが失敗が多い。

SHARE

BACK TO LIST
TOP
【雪でアソビナ】真夏の海老名に舞い降りる、知られざる新潟雪物語

CONTACT

当メディア、記事に関する
お問合せ等はこちらからお問合せください。

SNOW HEAVEN