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雪深きローカル【松之山温泉スキー場】逆境を乗り越えたスノーアウトドアフィールドの誕生秘話

今回のインタビュー企画は、新潟でも有数の豪雪地帯、十日町市にあるローカルスキー場「松之山温泉スキー場」。人気急上昇中の雪上キャンプをはじめとした「スノーアウトドアフィールド」をコンセプトに掲げ、遊びを全面に打ち出すスキー場の仕掛け人である、常務取締役の村山英明さんにお話を伺いました。

photo by serica

湯米心まつのやま 常務取締役 村山英明
十日町市出身。スキー場を運営する湯米心まつのやま常務取締役。スキー選手だった父親の影響で4歳からスキーを始める。中学・高校とアルペンで全国大会に出場。スキー場やホテルの営業、コーチ業を経て現在に至る。2012年から4年間、スキークロスジュニア全日本のコーチも務める。

松之山温泉スキー場がどんな場所にあるのか教えてください。
松之山は豪雪地である十日町の中でも特に雪深い地域で、有馬温泉・草津温泉と並ぶ日本三大薬湯の松之山温泉があります。平均でも3.5m、多い年は5mを超える積雪になる地域です。
そんな豪雪地帯で育ち、選手としても活躍されていた村山さんですが、当時から松之山温泉スキー場に通っていたんですか?
松之山温泉スキー場は私が高校生くらいにできたので、当時スキー場はなかったんですよ。なので、温泉街の坂を踏んで登ったり、父親に赤倉に連れて行ってもらったりしてスキーをしていましたね。
松之山地域の冬の棚田(2021年撮影)
坂を滑っていたってすごいですね。スキー場がない中どこで練習していたんですか?!
スキー場ができるまでは、冬の棚田をみんなで上がって直滑降していました。今でいうスキー・スノーボードクロスのあの感じですね。でも1日1本しかできなかったので、うちの父親やスキー協会の皆様がロープトゥのスキー場を作ってくれたんですよ。本当に短かったし、圧雪車もないんだけど、みんなで工夫して練習して19時くらいまで滑ったり。
え!スキー場じゃない天然の山を滑ってたんですね。そこから全国大会ってすごいです!いつまで競技をされていたんですか?
棚田ウエーブコースは今でも得意技ですね(笑)。中・高と全国大会に出させてもらって、大学もスキーのセクションで入って競技をしていました。卒業して、マウントパーク津南というスキー場に就職して、そこでスキー場やスキー大会の運営、営業をやらせてもらいました。併せて、新潟県スキー連盟のアルペン部にも所属して、コーチ業もやっていましたね。8年くらい勤めたんですが、会社が解散になって松之山に戻ってきました。
松之山温泉スキー場では最初、どんなことをされていたんですか?
津南での経験があったのでお客さんのところに直接行って、誘客宣伝のために動きました。「知らなかったらこんな山奥には一生来なかったよ」っていうお客さんばかりで(笑)。もともとスキー大会の数は4、5本でしたが、営業した結果、最大25本くらいにまで増えました。
長靴で遊べるスノーアクティビティ。スノーラフティングやスノースクートなどアイテムも充実(写真:山田 努)
5倍はすごいですね。そんな中、スノーアウトドアフィールドを掲げたのはどんなきっかけが?
スキー場のPRイベントに行くと、「スキー?しない」「スキー場?行かない」って人が大半で。そこでどうやったらスキー・スノーボードをしない人をスキー場に呼べるかな、どうやったらリフトに乗ってもらえるのかなって考えたんですよ。

新潟県って国道17号線沿いの苗場、石打、塩沢、スキー発祥の上越、妙高高原がスキー文化、スキー産業だと思うんですよね。うちみたいな国道沿いじゃない、山に入ってきて、ずん止まりのリフト2基のローカルスキー場に何ができるかと考えた時に、雪が豊富にあると。他ではスノーアクティビティをリフトを乗せてやっていないからやってみよう!そんな思いでちょっとずつ、スキーをしない人も長靴で遊べるアクティビティを増やすように改革をしていったんです。
雪上キャンプの夜は晴れていれば満点の星空に包まれる(写真:山田 努)
長靴で遊べるスキー場はそこからはじまったんですね。今や人気の雪上キャンプですが、これはいつからスタートしたんですか?
キャンプは、20-21シーズンからですね。元々、大厳寺高原キャンプ場も運営しているんですけど、その常連のお客様から「冬にスキー場でキャンプとかできないの?」と言われて。内心は「何言ってんだろう?うちの冬の雪の量知らないのかな?」と思ったんですが、「ゲレンデ整備するやつでガーっと踏んでもらうとすごい助かるんだけど、、、」って。その程度でいいならと思ってやってみたのが始まりです。どんな感じになるかと思っていたんですが、いざその方と雪上キャンプをやってみたら、めっちゃ暖かくて(笑)。これならできそうだと思いました。

そこから駆け出しだったYoutuberのチキューギ.さんが雪上キャンプの楽しいところや気をつけるところ、道具などのハウツーを発信してくれて。あとは、アウトドア用品店のWESTさんが、雪上キャンプをしたい方に松之山をすすめてくれたお陰でお客さんが増えましたね。本当にありがたいです。
沢山の方と作り上げていってる感じが素敵ですね。スノーアクティビティの時もですけど、新しいものを導入される時って反対はなかったんですか?
アクティビティはスキーヤーにとって危ないんじゃないかとか、雪上キャンプもこんな真冬に「テント張ってあるぞ?!大丈夫か?!危ねえぞ!!」って感じでしたね。だから、暖房器具もあってあったかいことや、ちゃんと安全を確保して楽しんでもらうことなどを伝えて。呆れられたけど、反対はされなかったので「じゃあやろう!」という感じでしたね。やりたかったし、絶対やるなとは言われてないんで(笑)。
そのマインドが改革のスピード感にもつながってるんですね。やってみて地元の方の反応はいかがですか?
雪上キャンプの灯りってすごく綺麗なんだけど、それを見て近所の方はきれいだね、最高だね!って言ってくれてます(笑)。徐々に変わってきてますね。
村山さんの人を巻き込む力がすごいです!豪雪の中で遊んできたからこそ「スノーアウトドアフィールド」という発想が浮かんだんですね。
それもありますけど、スキークロスジュニア全日本のコーチ時代に、シニアのナショナルチームも一緒に練習してたんですが、その時に野沢や白馬の選手たちもいて。それぞれ今はバックカントリースキーを中心に活動してますが、夏は地元でキャンプとかマウンテンバイクを楽しんでる様子をFacebookで見て。それで新たに自分の地元でも出来るんじゃないかと刺激を受けたところもあります。
村山さんならではの繋がりが、今を作っているんですね!ちなみに、実は隠れパウダースポットとしても人気ですよね?
よく宣伝しないでって言われるんだけど、そうなんですよ。降ってる日は朝圧雪するんですが、午後には積もってほぼパウダーになるんですよ。大雪の時は午前中滑って、お昼ご飯食べている間にリセットされます(笑)。
棚田の作りになっているスキー場のキャンプフィールド(写真:山田 努)
スキー場近くには日本三大薬湯の松之山温泉街がある(写真:山田 努)

コンパクトなローカルゲレンデながら、スキー場、雪遊び、キャンプ場としてもポテンシャルの高い「松之山温泉スキー場」。ゲレ食の自家製肉味噌ラーメンも人気でスキーをしてもしなくても、1日中楽しめるのが他には無い魅力。近くには日帰り温泉「鷹の湯」もあるので、遊び疲れた体もポカポカに癒してくれます。皆さんもこの冬は是非、松之山のスノーアウトドアフィールドを満喫してみてください!

INFOMATION

HP:http://www.matsunoyama-ski.com

神田
神田
SNOW HEAVEN 編集部
趣味はサーフィン。2019年に湘南から新潟に帰郷しスノーボードを始める。ニックネームはきゃんだ。BEST BODY JAPAN 2018 新潟大会優勝。お酒が好きだが失敗が多い。

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